ほんのひとたらし

ほんのひとたらしで、生活に深みを増したいインドアOLの日常。

贈りたい1冊

みなさま、こんばんは。

今回は、下書きで長いこと寝かせていた茉莉子さんの企画記事。

これが最後になるのかなあと思うと寂しい気持ちでいっぱい。

また機会があったら、同じお題で皆さんと記事を書けたら楽しそうだなあ。

 

 

贈りたい1冊ということで、「今の生活に少し疲れてしまった方」に贈るものをチョイス。

今は頑張れないあなた、頑張る誰かに妬ましい気持ちを持ってしまうあなたにもおすすめしたい。

もちろん、目標に向かって邁進しているあなたにも。

 

 

『太陽のパスタ、豆のスープ』

f:id:kikkalife:20210627193409j:image

https://www.google.co.jp/amp/s/books.shueisha.co.jp/items/contents_amp.html%253fisbn=978-4-08-745026-2

 

 

本作を一言で言うと、「銀縁眼鏡をかけたちょっとダサい青年が、好きな人の憧れの芸能人を真似して、ある日突然学校1のイケメンに大変身」である。

というのも、突然婚約者に別れを告げられ、意気消沈する主人公明日羽(あすわ)が、「ドリフターズ・リスト(やりたいことリスト)」の作成によって、自分を取り戻していく物語だからだ。

銀縁というのは完全に私の趣味だけれど、眼鏡をかけたちょっともっさりした青年が、こうなったらかっこよくなるかもという軸を持って、髪を切り、コンタクトにし、サイズのあった洋服を着たら、クラス中がざわつくという現象と似ていると思っている。

だって、自分の道標に従ってブラッシュアップしていくという意味では、ほぼ同じじゃない?

 

恋人を失った今、自分には何もないと思っていたあすわだったが、叔母に勧められた通り、リストの項目を増やすにつれて、己がなにを必要としていて、どんな人間なのか気づき始める。

周りと比較して落ち込んだり、頑張れない自分を後ろめたく思ったり。

そういう心の柔らかくて薄い部分も全部ひっくるめて、自分なんだと受け入れられるようになったあすわに思わず涙ぐんでしまう。

物語の始まりでは、深く真っ暗な穴の中で座り込んでいるような絶望を身に纏っていたのに、周囲の手助けを受けながら、自分の足で大地を踏みしめて生きていく姿にどこか勇気づけられる。

 

いつだって、なりたい自分になれる。

なにかを始めるのに遅いなんてこともない。

これからの自分を考えたときがチャンスなのだろう。

 

 

「ええとね、リストはつまりきっかけだったんだよね。今の自分やこれからの自分を考えるきっかけ。だから、書いたらポケットに入れて、あとは自分で進んでいくしかないんだよ。書いたことを信じて、これがあるからだいじょうぶ、こっちで間違ってないって」
「そういうのを普通ー」
「チャンスって呼ぶんだよ」

 

 

響く言葉が随所に散りばめられており、心に染み入る。

是非書店で手に取ってみてほしい。